《side 東》




「やっべー、忘れもんした!」


「え!?ちょっ!!東!?」





携帯を忘れたことに気づいた俺は先ほどまでいた講堂までの道を折り返す。





キィーー。


誰もいなくなった講堂に、俺がドアを開ける音だけが響いた。





「お、あったー。」




さっきの授業の時に座っていた席まで行くと、携帯の青いランプがテカテカ光っていた。



それを手に持ち、校舎の廊下を走る。






「ちょ!高屋敷くーーん!廊下走りすぎ!!」



「ごめん!今だけ許して!」





すれ違った女の若い先生に声かけられたけど、振り返らずに答えた。







なんで講堂、4階になんかあるんだよ………。




階段を駆け下りながら考える。









玄関前でちょうど、見慣れた後ろ姿を見つける。








「美月!!!」


その後ろ姿に叫ぶと


「あ!東ぁ!」


彼女が微笑む。





長い茶髪のストレートで、スラッと背が高く、
容姿はかなりいい。


まさに才色兼備ってやつ。



及川 美月 (おいかわ みつき)。

大学に入ってすぐにできた俺の彼女。




だから、もう付き合って1年が経つ。





「急に走ってくから、ほんと何したかと思ったよ。」

「いや、早く走りてーけど、携帯ないのは困るからさ?」

「ほんっと、依存しすぎ。」

「うるせーぞーー」





まあ、依存してるのは事実かもしんねーけど。





だって、いつあいつから連絡来るかわかんねーし。