それから一週間後

「これ、お隣に届けてきな」

土曜日の休日にリビングのソファーに座りのんびり寛いでいると、母親が不躾に紙袋を差し出してきた。

掛けられた言葉と、その中身を想像して私は思いっきり顔を顰める。

「嫌だよぅ。お母さんが自分で届けてくればいいじゃん」

ゴロリとソファに寝転がる私を見て母は当て擦りのように壮大なため息をついた。

私は聞こえない振りをしてテレビのチャンネルを変える。

「どーしてうちの子はこうなんだろや」

方言交じりに母がボソッと呟く。

此処から恒例となった嫌味が続く。

30歳にもなって結婚どころか、恋人一人作らず、休みの日は家でゴロゴロして。

家事を手伝うならまだしも何もしないでトドのように寝そべっているだけ。

この体たらくじゃ一生結婚出来ない。

恐らくそんなところだろう。

もう何度も聞いてすっかり暗記しているので私が代わりに言ってやりたいくらいだ。

最初のうちは嫌味に一々反論していた事時もあったが、何度も続くと億劫になり、次第に聞こえなくなってきた。

妻の小言を聞き流す熟年夫婦の旦那の境地にわずか一年にして辿り着いた私の適応力ってすごい。