「今日からこのクラスの担任を務めます、立花裕介です。」


嘘でしょ。


教壇には立花さんが立っていた。


「これから一年間よろしくおねがいします。」


唖然としていた私を置いて、短めのホームルームは終わっていた。


「イケメンじゃない?今年の担任。」


梓(あずさ)が興奮ぎみに話しかけてきた。


「…そうかな。」


イケメンとかそんなのより、


立花さんが担任という事実を受け入れられなかった。


「もう、結香は男見る目ないなぁ。


…よし、結香、こうなったら今年こそは彼氏作るぞー!」


「……。」


どうなったら、今年彼氏作ることに繋がるのやら。


それより、私は立花さんのことが気になっていた。


「今日はもう学校終わりだし。帰ろうよ。


あ、帰りどっか寄ってく?」


梓は幼馴染み。


「あぁ…うん。」


私のことを冷たい、とかいいながらも何だかんだで付き合ってくれる。


「そういえば近くに新しいドーナツ屋さんできたよね?行く?」


食べ物の情報は梓が一番よく知っている。


「うん、行きたい。」


「じゃあ早く行こうよ。」


梓が私を急かした。


私たちが教室を出ようとしたとき、


「綾瀬いるか?綾瀬結香。」


そう私の名前を呼んだのは立花さん、…立花先生だった。


「結香、イケメン先生が呼んでるよ。…何やらかした?」


「…さぁ。」


見当はつく。春休みのこと、だと思う。


それ以外あり得ない。