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「あの、藍ちゃん」

顔をあげると、瀬里が私を見ていた。

「……なに?」

瀬里とはあの日以来話していなかった。

「この間は……ごめんね、一臣君と一緒に……」

たちまち数日前の雪野一臣の言葉が脳裏に蘇った。

『単刀直入に訊くが、昨日の男とは知り合いなのか』

あの時は、どうしてわざわざあんな事を聞かれるのか分からなかった。

でも今となれば、ひとつの考えが胸に浮かぶ。

……もしかして……雪野一臣は、律の正体を知っているのかも。

それに、瀬里も。