が。

「そんな嫌らしい金気の臭いがしてきそうなことはやらん」

と、さくらの父である穣はにべもなく言った。

むしろ、

「そうやって他人のふんどしで相撲を取るような考えをするやつに、うちの娘はやれん」

と、露骨にいやな顔をした。

大輔は内心、

(なんと融通がきかないことか)

と理解力の乏しさに失望したが、

「ま、年寄りはいつかいなくなるから、無視しても問題はない」

などと、のちに同期にうそぶいてみたりもする。

どっちもどっちといったような、座が白けかけるような台詞であったが、

「ま、うちの人は職人気質で頭が固いから」

と百合子が言うと、

「あなたがそういう調子で変にこだわるから、いつまでも店が小さいまんまなんじゃないの」

と百合子らしい厳しい言い方で、穣をやり込めたのであった。