「おはようございます、国王。おや、珍しくもう準備なされていたのですね」


――朝。


ロバートは私の寝室へ入るなり、既に起き着替えを済ませていた私を見て、驚きの声を上げた。


あの話があってから今日に至るまで、アーネストの王女を迎えるための準備で、城の中は慌ただしくなっていた。


父亡き後、前王妃である母は、「これからは王妃という肩書きに縛られず、気楽に過ごしたい」と、早々にのどかな田舎にある別荘へと引っ越してしまい、夫婦で使っていた一番広い部屋が空き部屋となっていた。


そこを今日から、私とアーネスト王女が使う寝室にするらしい。



古い家具を全て処分、または移動をし、真新しい家具に置き換える。


夫婦で床を共にする寝台も、今使用している大きいだけのものではなく、派手に装飾のされた天蓋付きのもの。


チェアもテーブルも白を基調とし、薔薇の花が掘られた乙女調のもの。


寝室の隣にはアーネスト王女の部屋も作られ、言わずもがな乙女調の部屋となっていた。



私の下に弟がいるのみで、母以外家族で女性がいなかったものだから、このような女性らしい派手な部屋に思わず閉口してしまう。


その部屋で、今日初めて会った女と寝床を共にするのかと思うと、とても気が重い。



気持ちの落ち着かない部屋で、互いに心を許さないであろう女と……。


私の精神がいつまで持つのか、それがたまらなく不安だった。