ケータイ小説 野いちご

アフタヌーンの秘薬

【揉捻】回転する想い




カフェが休みの日には龍峯茶園に出勤することにしているから休みがほとんどなく、2ヶ所の職場を合わせて今日で9日連続勤務になる。疲れが溜まってきているけれどカフェを休めばそれはそれで迷惑がかかるし、聡次郎さんとの契約も疎かにはしたくない。
当初思っていた契約とはかなり違ってきてはいるけれど、生活がかかっているのだから今は頑張りどころだ。

龍峯茶園の制服のストライプシャツを着て、カバンに荷物を詰めていたとき玄関のチャイムが鳴った。

こんな時間に誰が来たのだろう。

不審に思いながらドアスコープから外を見ると、ドアの前には聡次郎さんが立っていた。

「は?」

驚いた勢いでチェーンを外しドアを開けた。

「何やってるんですか?」

「朝の挨拶よりも先に聞くのかよ」

目を真ん丸に見開く私に聡次郎さんは呆れている。

「だって……何で私んちに来るんですか?」

「迎えに来たんだよ」

「迎えって……」

聡次郎さんはスーツを着ているけれど手ぶらだ。

「ここまでどうやって来たんですか?」

「車」

「どこに出勤されるんですか?」

「どこって、龍峯だろ。乗せてってやるから準備しろよ」

聡次郎さんの言動が理解できない。自分の会社のビルに住んでいるのにわざわざ私の家に来て会社まで送ってくれようとしている。

「ちょっと待ってください……」

聡次郎さんをドアの外に残し、コートを着てカバンを持つと玄関に置いた全身鏡でさっと全身をチェックした。


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