山の中腹辺りまで来たとき、滝の名所と書かれた看板と共に大きな駐車場が現れた。


バスはそこで停車し、その揺れで先生が目を覚ます。


大きく伸びをして欠伸をしている様子が、友香から見てもわかった。


「先生、おはよー」


そんな声があちこちから聞こえて来る。


「おぉ、悪い。寝てた」


悪びれる様子もなくそう言い、立ち上がって生徒たちを見回した。


まだ目が完全に開いていなくて眠そうだ。


「ここで一旦休憩だ。トイレは土産物屋の近く。危ないから滝に近づきすぎないようにな。5分後にバスの前に集合だ」


先生がそう言うとバスのドアが開き、生徒たちはざわめき立ちながら外へと出て行く。


友香も長時間の閉鎖空間から解放され、外の空気を思いっきり吸い込んだ。


「空気が綺麗だねぇ」


後から下りてきた美夏が友香と同じように空気を吸い込んでそう言った。


「そうだね。おばあちゃんの家を思い出すよ」


「おばあちゃんの家ってどこ?」


「岡山の県北。横野の滝があるんだ」


「変な名前の滝」


美夏に言われて友香は笑った。


そう言われば確かに変かもしれない。


地名がそのまま滝の名前になっただけだし。