ケータイ小説 野いちご

あの手の温もり

高校2年、秋



9月に入って、お父さんの容態はますます悪くなった。


新しい抗がん剤で一時は回復をしたように見えたものの、しばらくすると効かなくなって転移したところがどんどん大きくなっていった。


抗がん剤は正常細胞をも破壊してしまうので、体力が落ちているお父さんの今の体だと、抗がん剤で死ぬこともあると聞かされた。


癌で死ぬんじゃなくて、お父さんの体を良くするはずの抗がん剤で死ぬって……。


治療をやめて自然に任せるか、このままリスクを承知の上で治療を続けていくか。


お父さんには詳しいことを告知してなかったので、お母さんにとってツラい選択を迫られることになった。


もう治らない……。


そうはっきり断言されたようなもので、お母さんとゆりは抱き合いながらワンワン泣いていた。


その姿を見ているのがツラくて、でも一緒に泣くことも出来なくて。


どうしようもなくなって、万里に助けを求めた。


「ツラかったら思いっきり泣けよ……」


万里はそう言って優しくあたしを抱き締めてくれた。


喉の奥がカーッと熱くなって、視界がゆらゆら揺れる。


瞬きをした瞬間、涙が次々と流れ落ちた。



< 26/ 34 >