あのドキドキ交際スタートから月日が流れ年も暮れの頃
大也くんは試合の中日で練習終わりに家に来ていた
1LDKの一人暮らしにはちょっと贅沢だが、セキュリティもしっかりしててカメラの機材の収納の考えると即決だった
ふたり掛けのソファにならんで座り、テレビを観ながら温かいコーヒーをすする
「杏さん、1月の第2日曜日って仕事休めたりしない?」
テレビ横に置いてあったカレンダーを眺めながら大也くんが確認をする
写真館なので日曜日は当然仕事だが前もって分かっていれば休日希望を出して休むことも可能だが、1月の2週目となると大抵成人の日がくっついてて三連休が多忙すぎて休日希望を出せる状況ではないけど…
大也くんに倣ってカレンダーを眺める
……奇跡かな元旦が月曜日で第2日曜日は成人の日の翌週である
「あ、休めるかも」
今ならまだギリギリシフトをいじれるかもしれない
私の返事にパッと表情を明るくした彼はポケットからチケットを2枚取り出す
「プレーオフ最終日だから来てくれないかな?」
ラグビーのトップリーグのプレーオフは通常のシーズンのリーグ戦上位4チームが参加するトーナメント戦
昨シーズンはリーグでの優勝はしたものの、プレーオフでの優勝を逃してしまい、リベンジに燃える今シーズンは運営ルールが変わりプレーオフ優勝が総合優勝とリーグ優勝の両方を手に入れるらしい
「来てくれないって……大阪!?」
チケットを見て開催地に驚く
会場はラグビーの聖地『花園』になっていた
「ダメ?」
子犬のように小首を傾げる…体は大きいのにこの頼み方に私が断れないことを知ってやがる
「行くけども…佳香誘えるかなぁ…」
佳香のいる店舗も今ならまだ間に合うかなぁ
「杏さんのためにめっちゃトライ決める」
そう言いながらタックルをかまされる…正確には抱きついてきてるだけなんだろうけど、ラガーマンがやると勢いがタックルにしか感じない件…
でも抱きついてくる姿は可愛いと思ってしまいつい頭を撫でてしまう