2月14日ーーー放課後

目が覚めると、そこは薄暗い場所だった。時計の秒針の音が響く。
独特な消毒の匂いで、此処が保健室なのだと理解した。

ドアの向こうから僅かに声が聴こえた直後、誰かが入ってきた。

戸の閉まる音の後、少しずつこちらに近づく足音。そして、その足音は私の寝ているベッドの横で止まる。
少しの沈黙の後、突如唇に何かが触れた。

「いつまで寝たフリ続けてるのかなぁ?晴香ちゃん」


____先生じゃん!


しかも寝たフリだってバレてる。。。

「起きないと、ここにキスしちゃうよ?」

と言って触ってきたのは耳。。。

「えっ!?」

「やっぱ起きてる」

「あっ!!」

恥ずかしいから寝たフリ続けようと思ったのに。。。

「ふふっ、顔真っ赤。そんだけ照れる事出来るならもう大丈夫そうだね」

笑いを堪えながらそう言った。
・・・大丈夫そうだねって?

「えーと、私・・・」

「いつも通り授業サボりに来たのかなぁ~って思ったら顔色悪いし、熱あるし、ぶっ倒れるし。なんで風邪引いてるわけ?」

やばい・・・
こんなに怒ってる先生の顔見たことない。

「え、えーと・・・今日バレンタインでしょ?それで先生にチョコ渡すために作ってて・・・」

「それだけで風邪引く?」

「それは・・・その・・・・・・」

「何?」

「途中でチョコ足りなくなってですね。。。」

「寒い中、薄着で買い物に行った、と。馬鹿か。」

「・・・ご、ごめんなさい」


呆れられちゃったかな。

そうだよね。。。


「ねぇ、その最高傑作のチョコ。早く頂戴」

「・・・う、うん。」

鞄の中から、薄ピンク色の箱を取り出すと、顔も見ずに渡した。



俯いていると、ふわりとしたものに抱きしめられた。


滲む視界の先に、見慣れた白色。

____先生に抱きしめられてるんだ。


「嬉しいけど、俺のために風邪引くなよ」

僅かに耳にかかる吐息がくすぐったい。

「お前がぶっ倒れた時、マジ・・・心配したんだからな」

さっきまであんなに怒っていたけど、本当は心配してくれてたんだ。そう思うと少し嬉しかった。

「今、食べていい?」

「・・・もちろん!」

前、甘いもの苦手っていってたから、甘さ控えめにしてみたけど・・・大丈夫かな。

「凄く美味しい」

「ほんと?甘すぎない?」

「大丈夫。それに



____もっと甘いもの・・・晴香から貰うし」