「……ちょ、え…、は…?」



開いた口が塞がらないとはまさにこのことだ。


咲耶は目をこすり、パチパチと見開いて再び自分が置かれた状況を確かめる。



家の屋根裏にいたはずが、辺りを見渡すと背の低い建物がずらりと並び、その周りには木や川も見える。


だが、何より驚くべきはそこではない。



道行く人々が皆、着物を着ているのだ。



100年以上前から洋装が定着しているはずの今の日本でこんな光景が広がっているなんてあり得ない。


咲耶は時代劇の中に入り込んだのではないかと錯覚してしまいそうになるが、首を振って現実に戻る。


それが違うのならば自分の目…、いや、頭がおかしくなったのではと疑い咲耶は地面に腰を下ろしたまま頭を抱えた。


そこでもまた追い打ちをかけるように、普通とは違う光景が広がっていた。


そこに見慣れたアスファルトはなく、一面が土で覆われていたのだ。