ふわふわ、ゆらゆら揺れる感覚。


夢の中に意識がどんどん落ちていく。


思い出さないようにしてたのに、どうしてこんな時に限って思い出しちゃうのかな。


どうしてあたしだったんだろう。


あたし……なにも悪いことしてないのに。


どうして、あたしがこんな目に遭わなきゃいけないんだろう。


なんて今さら考えても無意味なのに、あの日から未だに答えを見つけられずにいる。



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高校に入学して間もない4月中旬のある日。


入学前に病院で受けた健康診断の結果に気になるところが見つかったとかで、仕事を早く切り上げてくれたお父さんと病院に行くことになった。


するとすぐに診察室に案内され、たくさんの検査を受けることに。


検査のあと、電子カルテに向かう先生の前の丸イスに座らされた。


先生は何やら、真剣な表情でカルテを見ている。


引き締まった横顔がとても魅力的。


うん、なかなかのイケメンだ。


白衣の胸元にぶら下げた名札には矢沢の文字。


ふーん、矢沢先生っていうんだ。


矢沢……矢沢……。


うちのクラスの矢沢君と同じだ。


30代後半くらいかな。


矢沢君の親戚かなにか?


なーんて、そんなことを考えながら丸イスでくるくる回って遊んでみる。


すると、お父さんに「やめなさい」と怒られた。


だって、先生はずっと黙ったままだし。


CTだかMRIだかわからない画像を画面に大きく写したまま、微動だにしないんだもん。


退屈だよ。


それにめちゃくちゃ眠い。


ちょっと……体もダルい。


頭も……痛いかも。


だけどそれは、環境の変化に慣れなくて疲れているせい。


矢沢先生は神妙な面持ちで電子カルテから視線を外すと、あたしとお父さんの方に顔を向けた。


うん、正面から見てもやっぱりイケメン。


少しだけ、矢沢君に似てる……かも。