教室へ戻って来たあたしは気がかりを払しょくするため、浩志のスマホを取り出した。


時間を確認する以外に中をのぞき見したりはしていないけれど、ここにヒントが隠されているかもしれないのだ。


あたしは昨日会ったばかりの明さんの顔を思い出していた。


朝、目が覚めて浩志になってから、明さんに似た顔を見た気がしてならない。


もちろん家の中や学校で見たわけじゃない。


浩志のお屋敷のダイニングルームに飾ってあった写真の中に、似た人物を見つけたのだ。


もしかしたら浩志と明さんは知り合いなのかもしれないと思い、登録されている名前を確認していく。


ただ登録者を確認しているだけなのに、あたしは目を見開いた。


まずは有名企業の名前がズラリと並んでいる。


そしてその企業の息子や娘と思われる人物の名前も沢山登録されているのだ。


やっぱり浩志はあたしとは生きている世界が違うようだ。


スマホを確認するだけでため息が漏れてしまう。


しかし、浩志のスマホの中に明さんのデータは入っていなかった。


あたしの勘違いだったんだろうか？


そもそも明さんと浩志が知り合いなら、明さんもどこかの御曹司である可能性が出て来るわけだ。


見た目判断はよくないが、奏からお金を奪っている明さんがお金持ちの息子だなんて想像できなかった。


やっぱり明さんはただのニートか……。


そう思った時だった。


写真のデータを確認していると、家に飾られていたのと同じ写真が出て来たのだ。