目を開けると真っ白な天井があった。


見知らぬ天井にあたしはゆるくため息を吐き出す。


また誰かに乗り移ってしまったんだろうか。


そう思って体を動かそうとするが、何かに固定されているように動かない。


視線を移動させてみると、点滴の袋が見えた。


どうやら点滴の針はあたしの腕に刺されているようだ。


状況が飲み込めずにボーっと天井を見上げる。


いつもなら他人として目覚めてもすぐに体が動いていたのに、今回は声を出す事もできない。


一生懸命口を開いてみても、それは妙な唸り声になってしまった。


まるで何日も言葉を発していないような感覚だ。


あたしは誰になってしまったんだろう。


そう思った時だった……。


ドアが開く音が聞こえてきて、複数の足音が近づいて来た。


「え、うそ! イツキ目が覚めてるよ!!」


その声はユメノのものだとすぐにわかった。


あたしが視線を巡らせようとすると、ユメノがあたしを覗き込んできた。


「ユメ……?」


最後まで名前を呼ぶことができずに、言葉が喉につっかえる。