意識が揺れる。
 遠いところを漂っていた自分の部品が、引力に導かれるように、すうっと集まって体内に戻ってくる。
 鼓動。
 血流。
 呼吸。
 電気。
 動くもの。ひとところに留まっていないもの。オンとオフを繰り返し、変化し続ける集合体。
 それがわたし。

 朦朧とする意識を手繰り寄せて、
 年を取った自分に気づく。
 中学生じゃない。大人だ。
 カーキ色のスカートに、白いモヘアのセーター。
 目の前に置かれたビールのコップは飲みかけで、ガラスの表面に汗をかいている。
 飲みきってしまおう、と手を伸ばすと、

「未波! 未波、ちょっと飲み過ぎだって」

 亜依に止められた。
 わたしよりも少し高い体温。
 亜依に叱られるとわたしはとても安心する。まだ見捨てられてない、と思う。
 だからもう少し、甘えてみる。

「飲みたいよぉぉ……」
「もう充分でしょ。ろれつ回ってないくせに何言ってんだか」
「だって喉渇いちゃった」
「あーはいはい、じゃ、水ね。すみませーん、お水もらえますかー? はい、ひとつ」