窓越しに蝉の声が聞こえてきて、三度目のループが始まった。
 眠って、覚醒したら別の時間に跳んでいる。
 夜間の睡眠だけでなく、気絶などの意識喪失も時空を超えるきっかけになりうる。
 タイムマシン的な具体的なアイテムは必要としない。
 季節が逆流し、身体は若返って別の場所へ移動する。

「未波、起きなくていいの? 図書館の自習席、早く行かないと取れないんじゃない?」
「もう起きてる」
「あら、偉いわね。朝ごはんできてるわよ」
「今行く」

 十四歳の夏としては、四度目になる。
 また同じ、合宿初日の朝だ。
 わたしは急いで制服に着替えた。胸元のリボンの結び目を整え、階下に降りる。
 朝食のトーストが焼き上がったところだった。

「お母さん、おばあちゃんの病院に行くんでしょ? 洗い物はしておくから、心配しなくていいよ」
「本当に? 未波が大人になってくれて助かるわ」
「おかずはタッパーに入れて、冷蔵と冷凍、いろいろ用意してあるからね。二泊三日、どうにかお父さんと乗り切ってくれる?」
「言ってなかったけど……わたし、これから学校に行くの。部活の合宿。二泊三日だから、帰ってくるのはお母さんと同じ日」
「あら……参加するのね」
「うん、後悔したくないから」
「わかったわ。先生やお友達によろしくね」
「うん。行ってらっしゃい」

 前にもかわしたやり取りをなぞり、母を見送る。
 テレビはつけずに、携帯電話をチェックする。