か、奏ちゃん?

名字でもなくて何でいきなり下の名前?



「……あっ、久しぶり」



びっくりした。

奏ちゃんなんて呼ばれたの、幼稚園児の時以来じゃん。

っていうか、未だにその呼び方する?



そもそも話しかけられることすら数年ぶりだよ。

どういう心境の変化なの?



次咲くんは、普段の暗い表情からは想像がつかないほどニコニコしている。



えっ、なんか不気味だよぉ。



「奏ちゃんも買い物?」

「え、あ、うん……」



しかも、妙にお喋りだし。

学校の陰キャラと、同一人物とは思えないほどの変貌ぶりだ。



「僕もね、買い物」

「あっ、そう。そう、なんだぁ……」



次咲くんは明るく笑いながら、鳥やら豚やら次々と肉をカートに入れ始めた。



「その……今日は上機嫌だね」



思わず、そう言わずにはいられないくらい次咲くんは不自然だった。