「あら、奏。今日は珍しく早起きねぇ。今から朝食作るから少し待ってなさい」

「ゆっくりでいいよ。登校までまだ時間があるし」



今朝は珍しく早く目が覚めた。



寝坊と遅刻の常習犯である私が、まだ外が薄暗い早朝に目覚めるなんて。

一体どういう心境の変化?



だなんて母は驚いているけど、寝る間を惜しんで起床した理由は言わなかった。



今は……残された時間を大切にしなきゃ。

この何でもない平凡な日常を、この目に、脳に……焼き付けておかなきゃ。



「はい、とりあえずコーンポタージュでも飲んでなさい」

「ありがとう、お母さん」

「何よ〜?ニヤニヤしちゃって気持ちが悪いわね」



何でもない日常が、こんなに幸せだったなんて。

今になって初めて気が付いたよ。



でも……それももうすぐ終わるんだね。



「じゃあ、行ってきます」

「はいはい、気を付けてね」



お母さん、今までありがとう。

声に出してそれを言うと涙が出そうだから、今は心の中で言わせてね。