「あれ?どうしたの?今朝はいつになく不機嫌そうだね」

「あ、次咲くんおはよう!そんなことないよっ」



とは言ったものの、翌朝になっても馬鹿にされた怒りは収まらなかったみたいだ。

地を踏み鳴らしながら土手沿いを歩いていると、後ろから次咲くんに肩を叩かれた。



「某映画の怪獣みたいになってるよ」

「なってません!」

「ご……ごめん奏ちゃん」



昨夜は怒りのせいか、無駄にドキドキしてしまったせいか……

全然眠れなかった。



だって、アーラが昨夜見せたからかうような笑み。

純真な乙女心を弄ぶような真似をして、思い出せば思い出すほどイライラしてくる。



それと相まって、頬に触れる指の感覚もまだハッキリと残っていて……

思い出せば思い出すほど、鼓動が速くなる。



なんか、複雑な気持ちなんだけど。



「やぁ、おはよう」

「あっ、大悪魔様……じゃなくて黒羽さん!おはよう御座います!」



って……まさかまさかのタイミングでアーラの登場?



恐る恐る振り返ると、

「おはよう。二十日さん?」

悪魔がニンマリと微笑んだ。