ここは…神社?
さっきまで屋上にいたような…

夢かな。
いつの間にか寝てしまったのかも

それにしても夢でまでサックス持ってるってどんだけ私はサックス馬鹿なのよ。

せっかくだし、吹こうかな。、

私はJAZZがすきで、有名なJPOPをJAZZにアレンジしている。

何吹こうかな。
なんかここはいかにも和って感じだし、よし。春よ来いにしよう。

息を大きく吸い込んで音を出す。
力強い音色が境内の隅々まで響き渡る。

最初はなんのアレンジもせずにサビの部分を吹く。

そしてAメロから、JAZZに切り替える。

ああ。空気が振動しているのが伝わる。

あっやべ。半音高かった。

周りに音をたてるものは何もなく、木々が私を見下ろしてるだけ。

さわさわと風が木々を揺らす。

そこにサックスの音色が響く。

気持ちいい。

フルで拭き終わった後、私は境内に腰掛ける。

そろそろ冷めてもいい頃なのにな…

なかなか冷めない夢だと思い、不安になる。

でも、あるよねたまに!リアルか夢かわからない夢!

うん。それだ!

でも、サックスを吹いているときの指の感じや音は間違いなくリアルだった。

うーん。もしかして夢じゃないとか?

そういって、ほっぺをつねる。

あれ?!痛くない!やっぱ夢だ!

…なんちゃって。全く力を入れてなかっただけです。

だってこれで痛かったら現実ってことでしょ?!

テレポーテーションでも身につけたってことでしょ?!

そんなわけないよな!いくらなんでもこれは夢だ。

よし。今度は思いっきり…むぎゅっ!

痛ーい!!あははは!!!!!痛ーい!!!




……拝啓
ブラバン部の皆様
春爛漫の花見日和の今日。いかがお過ごしですか?

私はテレポーテーションを身につけてしまったようです。

かしこ。


はぁあ… なんでだよー
私にはもしかしてすごい力が宿ってるとか?

ありえない。私のお父さんとお母さんは普通のサラリーと主婦よ?!

とりあえずここがどこなのか調べなきゃ。

神社の鳥居をくぐると、すごく長い階段が続いている。

ま、まじか。。

これじゃ途中で疲れて足もつれて転落死だよ…

あ!こういう時こそテレポーテーション使えばいんじゃない?!

あったまいい〜♪

よし。

階段の下まで、行けー!!

……………


行けーー!!

………………

い、行 か な い だ と ? !

なんだよー。私テレポーテーション使えるんじゃないのかよー

諦めて自力で降りるか…


_______________________

はぁ…はぁ…

実は階段って登るより降りる方が方が疲れるのね……

サックス持ってるから余計に疲れた

やっと着いたよ

足ガクガク。

てか、ここどこ?

なんか建物低いし、木造だし、土道だし、ここ時代遅れな僻地とかかな

ん?てか人も結構な時代遅れじゃない?

今時まげって!
今時袴って!
今時着物って!
今時腰に刀ってぇええ?!!!

なにこれ!
時代劇の撮影現場?!

あ、もしかして昨日大好きな新撰組の大河ドラマのDVD見たからかな?

もしかしてその現場?

もぉ〜私のテレポーテーションもやるじゃなーい♡

でもカメラも何もない。
監督さんもいない。

ふふっもしかして私、場所だけじゃなく時間までテレポーテーションしちゃったとか♡

ふ ざ け る な!!!

どういうことだよ!

そんなのありですか?!

この、科学技術が著しく進むこの現代で!

そんなのありですか?!

……とりあえず優しそうな人に声かけてみよう。

キョロキョロすると、甘味屋と書かれた看板が掲げてある店の前に、かわいい女の子がいらっしゃる。

あの人にしよう!

「あのーすみません」

「はいいらっしゃい。
あら、貴女ここらでは見ない格好やね! 」

「あはは…遠いところから来たかもしれないので……」


時間的にな!!

「ご注文お伺いいたしましょうか?」

「あ、いえ。ただちょっと聞きたいことがあるんですが…」

「なんでしょうか?」

「今って何年ですか?」

「は?今ですか?」

あらら、この子怪訝な顔してるよ。
そりゃそうだ。私だってそんなこと聞かれたら危ない人だと思うよ。

「今は文久3年ですが」

……拝啓
ブラバン部の皆様

どうやら私はテレポーテーションだけじゃなく時空移動までできるようです。

これからは私のことはエスパー桜と呼んでください。

かしこ。

「あ、ありがとうございます…」

あー目の前がまっくろくろすけになってきた〜…ぁあはははは

ふらふらしながらその店を後にする。

このパターンは新しいな。
気づいたら文久3年にいるとは。

酔っ払いのおじさんが気づいたら駅のホームで寝てた気持ちがわかったよ

とりあえず、戻る方法考えなきゃ。
でもどうやってこっちに来たのかもわからないからな〜…

うーん。となれば
ここで生きてくしか、ないかなっ☆

そうだよ。もしかしたら突然帰るってこともあるかもだし、とりあえず今はこれからどう生きてくか考えなきゃ…

えー、今の私の手持ちの武器はさっきから浮きまくりで痛い視線を集めてるこの制服姿と、お菓子のゴミと少しの勉強道具しか入ってないであろうスクバと、7年くらい前からの私の相棒、サックスのさくちゃんだけ!

…ネーミングセンスないなだって?
許してください今付けたので…

でもこれは人々の注目を集めるには絶好の武器!

ストリートミュージシャンになって、お金を恵んでもらおう。

道を見渡すと、いい感じのスペースを見つけた。

よし。ここでいっか。

私はそこにサックスのケースを置き、カバンにルーズリーフとペンをだし、お金はこちら☆ と書いてマスキングテープで貼る。

そして大声で叫ぶ。

「皆さんちゅうもーーーく!!
今からサックス演奏会始めるよぉお!!」

すると街を歩いていた人がなんだなんだと集まってくる。

よし。これだけいれば一晩宿に泊まるくらいの金は集まるだろう。

「レディースエンドジェントルメーン!みなさん!お集まりいただきありがとうございます! ではではー今からサックス演奏会を始めるので、いいなと思ったら是非!お金を恵んでください! 」

愛嬌だけはある私はヘラヘラと話す。

すると、
「よっ!ねーちゃん!なんだかわからんがいいねー!その格好はどこのもんだー?」

野次馬の一人が声をかけてくれた。

その人をビシッと指差して答える。

「そこのおにーさん! ノリがいいねえ! 私は江戸から来たものだよー
変な格好って、おにーさんの着物の柄には負けるけどね!」

どっ!!

人々から笑い声が聞こえる。

よしよし。この調子

だっておにーさん、水しぶきに鯛っていうナンセンスな柄なんだもん。

おにーさんは照れ臭そうにこりゃまいったといって頭をかく。

「じゃあ、前置きが長くなってしまったけど、よかったら聴いてってね」

そして、私は息を吸ってさっきも吹いた春よ来いを吹く。

さっきまでざわざわしてた人の声が聞こえなくなる。

立ち止まる客が、増える。

この時代の人はJAZZは知らないと思ったが、JAZZは自由だ。

どの時代の人にも響くはず。

そして、吹き終わった。

ぺこりと頭をさげると、観客が湧き上がる。

サックスのケースにお金を入れて去ってく人や、驚いた顔で連れの人と話してる人。

「お前さん芸達者やなぁ!!このような曲聞いたことあらへんけど私好きやわぁ」
と、綺麗なお姉さんまでいる。

「たいしたもんだな!ほれ!金だ!その楽器も見たことないな!」
と言って、たくさんのお金を入れてくれたかっぷくのいいおじさん。

この二人は年の差カップルか?腕を組んでいる。

「ありがとうございます!綺麗なお姉さんと男前なおじさんに言われたら嬉しくて涙出ちゃいますよぉ!」

「がはははは!」
「ほほほほ…」

二人は笑って帰っていった。

すると、
「おねえちゃん!すごいね!」
と言ってきた小さな男の子。

手にはどこで摘んできたのかお花をもっている。

これあげる!と言うので、

「ありがとう。こんな綺麗なお花、貰ってもいいの?」

かがんで同じ目線に立ち聞くと、髪にさしてくれた。

「うん!そこらへんに咲いてたやつだから!」

と言ってお母さんのとこに走っていった。