気づくと見たことない場所にいた。
建物は全て木造で、地面は土だ。
今度はどこだろう。
私は昔から急にタイムスリップしてしまうという体質を持っていた。
例えば、平安時代に生で牛車を見たり、明治の文明開化の頃の街をブラブラしたりだ。
どうしたらタイムスリップするのかはまだわからないが、戻り方は簡単なので、タイムスリップすると、一週間くらいはそこにいる。
だって貴重じゃん?!
いろいろ見て回りたい。
この体質のせいで歴史に興味を持つようになり、今では日本史は学年一位だ。
初めこそ戸惑ったものの、一年に一回のペースで来てりゃあ慣れもする。
戻り方を発見したのは、6回前のタイムスリップ。
まだ私が12歳の頃だ。
3回目のタイムスリップでだった。
その時私は桶狭間の合戦の中に放り込まれ、1人の武士に斬られそうになったのだ。
そこでようやく確信が持てた。
そう。死にそうになると苦しむ前にすぐ意識がなくなり、目を覚ますと元の時代に戻っている。
初めてタイムスリップした時、つまり一回目はここがどこかわからなくてずっと泣き続けていた。
そしてすごくお腹が空いたのを最後に、記憶が飛び、気づいたら現代へ戻っていたので、一回目は餓死だろう。
二回目は平安時代だった。その時は田舎の優しい人に助けてもらったからずっと生きてはいられたが、飢饉が来て口減しせざるを得ない状況になったとき、殺された。
と、思う。実際刃物が刺さる寸前で現代に戻っていたので詳しくはわからない。
そして戻った現代では全く時間と状態が変わっていないかった。なので、実質タイムスリップした先に何年いようと、あっちの世界の私は何も変わらない。
それにどういうわけか、タイムスリップ中は私の外見も変わらない。
最高で5年、明治にいてみたことがあるが年を取らなかった。
元の世界に戻ると成長がまたスタートするんだけどね。
だから実際私30年くらい生きてんじゃない?
なぜか精神年齢は比例してくれないけどwwwww
17才を3年やるとかそんな感じ。
とまぁそういうことで、帰りたくなったら適当に川に身投げをすればすぐに帰れる。
こんな手軽な時間旅行はなかなかない。
私は髷と着物がひしめき合う街へ繰り出した。
私は今白のダボっとしたパーカーに黒のサルエルパンツ、ショルダーバックを下げて、それにスニーカーと言うめちゃくちゃラフな格好だ。
胸くらいまである黒髪は耳の横で緩くお団子にしてシュシュで固定している。
現代で、友達に誘われたダルい合コンで目立たないように選んだ格好だ。
カラオケでの合コン中だった。
入ると三人の男の子がすでに来ていた。
全員で6人。
それぞれ自己紹介をしていくが、興味のない私は適当に聞き流していた。
そんな最悪な態度の私に一人。ニコニコと話しかけてくれる人がいた。
2歳年上らしい。
名前は覚えてない。
ちゃっかり私の隣に座り、慣れた感じで話を振ってくる。
ペラペラ舌が回る人らしく、一緒に来てた友達をからかったりしてたきがする。
めんどくさくて聞き流してたから…
それで、その人が睫毛ついてるって言って私に触れた瞬間こっちにタイムスリップしてきた。
ナイスタイミング
でも戻ったらそっからスタートなんだよなぁ…
これまでのことを思い出しては見るが、それよりも街の人からの視線が痛い…w
でもそれもタイムトラベルではよくあることなので慣れっこだ
気にせず、へえ。こういう時代もあったんだな。と、頭の中で思う。
いつの時代だろう。
キョロキョロしていると、キャーという叫び声が聞こえてきた。
なんだなんだと行ってみると、私と同じくらいの女の子が刀を持った男に襲われていた。
「早く来いっつってんだろ!さっさと歩け!!」
「いやっ! 離してくださいっ」
「逆らうと斬るぞ?!」
あちゃー。不良に絡まれてますねぇ。 これは助けたほうがいいのかな?
幸い男はまだ刀に手を当てるだけで抜いてはいない。
斬られそうになってもその前に現代に戻ることになる。
だから怖くはない。
うーん。話しかけるなら今かな?
「あっれー?そこのかっこいいお兄さんどうしたの? 女の子に乱暴しちゃって。何か気にくわないことでもあったぁ?」
男を刺激しないようにかる〜く話しかける。
すると、男はかっこいいと言われ気分を良くしたのか、刀から手を離し、言った。
「なんだお前?誰だか知らねえが見る目あるじゃねえか。それに可愛いしな。よしお前でもいい。来い。」
男は今まで掴んでた女の子から手を離すと、今度は私の腕を掴んできた。
女の子は男から離れる。
よし。女の子は無事だな。
「いやだな〜。私が可愛いなんてお兄さんwwww
目腐ってんじゃないの?」
ヘラヘラから一変。最後はドスの利いた声で言い、睨みつけると、私の腕を掴んでいる男の腕を捻り、そのまま背負い投げをする。
喧嘩は得意だ。
喧嘩というかこれくらいは出来ないと、このタイムトラベル人生を楽しめない。