「へぇ、来てくれたんだ」

桜の木の枝に昨日と同じように座っていた彼は、私と目が合うなり目を細めてそう言った。

手にはこれも昨日と同じく、太いロープが握られている。

私のことなんか眼中に無いようなその態度に、些かの不満を覚えて反論した。

「……何ですか、それ。自分で来いって言っといて、まるで私が来たのが予想外みたいじゃないですか」
「ん、だって予想外だったもん」

彼は悪びれもせず、幹に持たれて欠伸をしている。

むぅ、折角来てやったのにその態度は何!?

私は軽く頬を膨らませながら怒りを態度にだし、大股で桜の木の下まで歩いていく。

そのまま彼の座っている枝をつかむと、力任せに揺らしてやった。

当然、彼は慌てふためいて木の幹にしがみつく。弱冠涙目だ。ざまあみろ。

怯えている彼を見ているとなんだか楽しくなって(私、結構サディストなのかもしれない)私は調子にのって右手を振り続けた。

「ちょっ、マジで勘弁!謝るから止めろよ!」

男性の、低く怒鳴るような声に私は少し恐怖を覚えた。今まで異性と仲良くしたことなんてなかったから、男の子に怒られる、なんて状況には遭遇したことがなかったのだ。

「ご、ごめんなさい……」