『ムカついたんだよ、お前のそういう顔に。』
舞台にドンと力強くたっているのは長澤杏奈。あの真面目そうな容姿と、普段の静かな様子からは想像もできないどすの効いた声。
『は?』
不破さんはきっと予想もしなかった一言に驚いている。
『真面目に勉強もしなかった人が、天才が降参した瞬間、期末で一位になるなんていう、シンデレラストーリー。』
『今すぐそのポジションから引き摺り下ろしてやりたかった。
あんたみたいなヤツ、シンデレラには似合わない。
だから、カンニングして上まで這い上がり、ついでにあんたを蹴落とした。まさに一石二鳥。』
その声を聞いていればここにいる誰しもが、軽い気持ちで犯した罪ではないことが分かった。
『ちょっと勘違いしないでもらいたいんだけど、勉強してたからね?期末一位、そして全国模試の上位を狙ってた。
そしてついに訪れたチャンス。逃すわけにはいかなかった。トップに上り詰めるためには、多少の犠牲は構わなかった。
じゃなきゃ、天才がいなくなってすぐ一位。それをキープすることなんて無理でしょ。』
意外な事実が本人の口から次々と発せられていく。