【大地side】



美月は、昔から、人前では絶対に泣かないし、明らかに泣きはらした顔をしてんのに、“泣いてない”って強がるような、そんな子供だった。


だけど、そんな美月が、愛美ちゃんとのことを話した途端、人目もはばからず、こんなに泣くなんて、きっと、よっぽどのことがあったんだよな……。



「せめて、俺には吐き出せよ。どんな美月でも、受け止めるから」



俺は、腕の中の美月をギュッと強く抱き締める。


すると。


近くで噂する声が聞こえてきた。



「ねぇ、あれって向日くんと土屋さんじゃない!?」


「え?わっ、ほんとだ!堂々と抱き合ってるけど、あの二人って付き合ってたの!?」


「やだ~!ショックー!」



……ここが学校の近くだってこと、すっかり忘れてた。


けど、俺は別に誰に見られても、誤解されてもかまわないけど。



「……もう行かなきゃ、テスト始まる」



美月はそう言うと、俺から急いで離れ、目元をゴシゴシと手で拭いながら何事もなかったかのように先を歩きだした。