「大蔵清良です」



清良君は、今日剃ったばかりのぴかぴかの口元にえくぼを浮かべながら、名前を言うように促した江渡館長ににっこりと微笑んだ。



「はきはきしていいわねえ」



江渡館長も、清良君とはまた違う落ち着きのある笑顔でにこにこ微笑んでいた。



「年はおいくつなの?」



「今年25歳になりました」



江渡館長は、応接間のソファーから立ち上がり、ワーキングデスクの上に置いてあった卓上カレンダーで日づけを確かめながら、「高橋さんからは、電話である程度の事情は聴いたわ。産休の先生が4月に復帰になるから、それまでの期間……4か月くらいになるけれど、それでも良いのかしら?」と清良君に尋ねた。



「構いません」



「男の人ならもっと力仕事とかした方がお自給がいいんじゃないかしら?ここの時給は、そんなに良い方でもないのよ?」



清良君は館長の言葉に少し考えたように頷くと、「ご縁なので」とソファーの横で立って聞いていた私に微笑んだ。