私は『大蔵清良』という人物のことをどれくらい知っているのだろうか。


はじめて出会った時の印象は、ワイルドなトイプードル。

ヘルメットのシールドをあげ、「お姉さん!」と言って、私を見つめたその時の必死な目が、愛おしくって仕方がなかったのを覚えている。


さりげなく優しくて、ちょっぴり天然で、甘えんぼ上手な年下の男の子。

たまに見せる、年下らしからぬ礼儀正しい態度とやけに上手すぎるピアノの腕前と、たまに見せる寂しげな表情。



目に見えて分かっている『大蔵清良』という人物は、そういうイメージ。



自分の中では、清良君のことを結構見えているかなと思っていたけれど、『その人は俺のことよく知らないだろうし、俺もその人のことをよく知らない……』という、清良君の言葉から想像できることは、私はまだ『大蔵清良』という人物を知り切れていない、ということなのだろう。



清良君が私に『知ってほしい』と思っているのは、どんなことなのだろう。

告白のようなことをされた余韻のドキドキと、清良君の発した言葉に疑問を抱いていたからだろう。

昨日は全く眠ることができなかった。


タイマーをセットしたFF式ストーブがリビングを暖める頃合いを見計らって、寝室から出た。

カーテンを開けると、真っ白な雪が太陽の光に反射してとっても眩しかった。

太陽の光を浴びながら、腕を天井に伸ばし、ぐっと体を伸ばすと自然と大きなあくびが出た。