「おはよーございます」


重い足取りでカラオケ店のドアを開けると、店長が潔白した表情でカウンターに現れた。


「星野君、ちょっと来てくれるかい?」


「何ですか?」


「今、警察の方が来てて星野君の話を聞きたいみたいなんだ。竹内くんのことで」


警察と聞いて自分が何かやらかしたのではないかと一瞬あせってしまった。


店長にいつも面接や事務所として使っている小さな個室に連れて行かれる。


そこには30代後半くらいの薄っすら髭を生やした男の警察がソファに座っていた。


「どうも。私、赤月警察署の渡辺といいます」



テーブルを挟んだ向かいのソファに腰をかけて、軽く頭を下げた。


こんな目の前に警察を前にしたのは初めてのことで、若干手が震え始める。


渡辺が話を切り出した。


「今日は突然押しかけてしまってすみません。実は今、竹内アズマという人物の行方を追っていましてね。ご存知ですよね?」


忘れることなんかできない名前…


予想はしてた。


いずれアズマについて調査するために、警察がやってくるかもしれないことに。


だから、そこは否定できない。


けれどアズマは無断欠勤が続いたため、クビ同然で辞めていた。


「知ってます」


「竹内と一緒にここでバイトしてたんですよね?」

「はい…けど、ここ一ヶ月無断欠勤が続いたので店長が強制的に辞めさせました。それからは一度も顔を見せていません」


警察は今の話をすでに店長から聞いたようで、特に反応はしていない。