近くで踏切の警音機の音がする。


あと3メートル先の角を右に曲がれば、踏切があるからだ。


午後10時半過ぎ。


明徳大学1年の星野拓夢(ほしの たくむ)は駅前にあるカラオケ店のアルバイトを終えて、帰路を歩いていた。


この時間になると街灯と自動販売機の光だけが虚しく、人通りも車も少なくなるから辺りは静まり返っていた。


「寒っ…」


あと1週間すれば12月に入る。


寒さで震える両手をダウンジャケットのポケットに突っ込み、歩く速度を速めた。


そして踏切のある道に出る角を曲がったとたん、何か違和感を感じた。


あの踏切、なんか変だ。


警音機が鳴り響いている踏切の遮断機の中に人が立っている…