オフィスに戻って、天野君が書いてくれた、自己啓発プログラムとコンピュータ上にある記録を調べてみる。
天野君が、営業に配属された根拠は何だろうと思って見てみようと思った。

コンピュータは、ここに登録あるデータから社員の情報を取ってくる。

天野君のデータだけど……

「空欄?」なにこれ。
たくさん記入できるようになっている自己啓発のスペースが、ほぼ空欄になっている。

手元にある、天野君が書いてくれたメモ書きには、
財務や経営分析やマネジメントの講習会に参加してること。

簿記の資格もあるから、会計帳簿の作成ができること。
そのほかも、取った資格や受けた講習会の一覧が書かれている。

これを書けば、かなりのスペースが埋まるはずだ。

学生の時から経理を希望して、希望と違う営業に配属になっても、仕事で必要な知識も付けながら希望する職種の勉強も怠らない。

彼の表面的な見た目の軽さと結びつかない。
人事の私を巻き込んで、どうにか事態を変えようと思ってるのだ。

必死だというのは十分伝わってくる。



天野君は、これを全部、調査用紙に書き込んだと言っていた。

どこで消えたのか、あるいはどこで止められて、書き込むところまで行ってなかったのか。

パソコンの画面を見て、考え事をしてたから、国崎君が私の様子を気にして近づいてきた。

「どうかした?大丈夫か?フリーズしてるのか」

「何でもない」私は、慌てて画面を消そうとした。

消す前に、国崎君が素早く私からマウスを取り上げた。

「何でもないっていう風には見えないな。なに、これ自己啓発のデータじゃないか。ほとんど書かれてない。空欄が目立つね」

「うん、ちょっとデータが反映してないって指摘を受けたの」

「そっか、今日はもう遅いから、明日報告すれば?」

「うん、そうだね」