来る日も来る日も、しょうじょは本の部屋ですごしました。

そこにある本をすべて覚えてしまうほど。

しょうじょが知らない本はなくなってしまうほど。



そんなある日。


"トン、トン"


ページをめくる音と、しょうじょの息づかいだけが聞こえる本の部屋にノックが響きました。


気づかうようにそっとした、やさしいノックでした。

しょうじょは思わずからだを縮こまらせます。


しずかにドアを開けてはいってきたのは、ひとりのしょうねんでした。

『本がすきなんだね』

しょうねんは、すこしおびえたようなしょうじょにやさしく笑いかけました。

ひだまりのような笑顔。
そのあたたかさにしょうじょの心は、ほわりとほぐれました。


『どんなはなしなの?』

しょうねんは、しょうじょのかかえる絵本を指さして言いました。

『……えっと……おひめさまがいて、ある日、ドラゴンにさらわれて……』

しょうじょがたどたどしく言葉をつむぐのを、しょうねんは見守るようにまっていました。