国中の家宅捜索が行われ、呆気なくお妃様の前に引き摺り出された俺達は、牢屋に入れられることになった。
あの99番の牢獄に。



「放して、放しなさい!その者たちは悪くないのです!」
「林檎様落ち着いてください。折を見てみなさんを助けます」
「貴女は……!……ほんと勇ましいわね」
「姫様に似たのですよ」




警備隊長に縄をかけられて牢屋に放り投げられた。
他の罪人にはしないような贅沢な牢獄暮らしをさせてくれた警備隊長には感謝するが、早く助けにいかないと、林檎は殺されてしまう。




どうすれば良いか、分からない。
今の俺は囚われの身だし、せっかく助け出した薬売りの娘も父親と共に牢獄へ逆戻りだ。




本当に役立たねぇな、俺は。





「本当にそう思うかい、六花くん」
「はぁ?林檎だけ別の牢屋に連れてかれてんだ。俺が助けられなかったから」
「まだ手立てはあります。私の職業を忘れましたか?」





薬売りが娘に支持を出す。
途端に苦しみ出す娘に、薬売りの言わんとしていることを理解した。
ここの警備隊長と守衛の娘なら、望みはある。




「守衛、助けてくれ。娘が苦しみ出したんだ。俺は医学の心得もある。審判の時までは生かしておかないといけないのだろう?」
「…………手錠を外そう、そちらの男の分もだ。手は多い方が良いだろう。頑張れ娘。お前ならまだ生きられる。共に林檎様に会おう」




手際よく外された手錠の開錠音に他の守衛が寄ってくる。
ひとつ舌打ちした守衛の娘は構えのポーズを取ると、丸腰で他の守衛を次々に気絶させていく。
あれは太極拳、か……?





「急いでください、姫様はお妃様のところなんです!」




兄が言っています、と無線から聞こえる警備隊長の声を伝える。
やばい、急がないとな。
待ってろ林檎。今助けるからな。