「はぁ……」


まだわたし以外誰もいない、一人きりのオフィス。

耐えきれずに溢れた溜息は、空気洗浄機の音にかき消された。


那月くんを拒んでしまったあの日。あの後何度もメールをして、電話も入れた。

けれど、那月くんからのアクションは無く、完全に無視されている状態。

一昨日の月曜日は那月くんが出張で会えず、昨日は少しだけオフィスで見かけたけれど、声をかけようかと悩んでいる間に出て行ってしまった。結局その日は直帰になっていて、それっきり。

そして迎えた水曜日の今日。わたしは酷く憂鬱で、朝から溢れるのは溜息ばかり。


あの日は、私が悪かったと思う。自分から家に上げておいて、いざとなって拒否するなんて……。

でも、ひとつだけどうしても、納得出来ないことがあった。


那月くんはわたしと、そういうことがしたいだけなのかな……?


那月くんの気持ちを疑っているわけでは決してない。ただ、行為を嫌がっただけで、ここまで避けられるのは……正直悲しかった。

喧嘩をした訳でもない、それなのに連絡を無視されるとなると……どうしても、頭の片隅にそんな考えが浮かんでしまった。



ぐるぐると悩んでいると、いつの間にか時間だけが過ぎていく。

目の前の事務仕事がひと段落し息をついた時には、すでにオフィスは活気に溢れていた。