「意味なく『穂のか』に来て??」
メールをみて、私は思わず独り言を言う。
まあ、今日は寄れるから寄ってみるけど。
麻生先生が来るのかな?

久しぶりに、一人で店に入ると、麻生先生の姿はなくて、
代わりにマスターと南君が迎えてくれる。

いつも通り、ビールを頼んで、つまみを摘まんでいると、

「ばんわ~」
聞きなれた声がして、ふと振り向くと、
やっぱり拓海で、

「……一人か? 珍しいな」
そんなことを言いながら、
カウンターに座る私の隣に腰掛けた。

私はあれ以来、ずっと彼に逢ってなかったから、
思わず心臓が跳ね上がる。
そっと下を向いて、呼吸を整える。

「このところ毎日ですね」
南さんが拓海にそう言うと、彼は曖昧に笑う。

「ところで、こないだモテモテだったね」
くすくすと笑いながら、南君が私にそう言う。
「え? 何のこと?」
私が思わず聞き返すと、
「こないだの合コン。あれ、佳代ちゃん狙いの人、多そうだったし」
そう言われて、私は思わず顔を赤くする。
「そんなことないよ、
皆大人だから、上手にしててくれただけで……」
そう言うと、南君がイヤイヤ、と言って、

「あの、端の彼なんて、
めっちゃ口説きモードだったでしょ?
あの後電話とか、メールとか来たんじゃない?」
そう言われて、確かにそうだったから、
「……」
思わず黙ってしまうと、

「……デートでもすんのか?」
ぼそり、と拓海が聞いてくる。

なんか、久しぶり過ぎて、
声を掛けられただけで、思わず顔が赤くなりそう。
慌てて、頬を両手で押さえて、小さくため息をつく。