記事が出るのと前後して、
先日のフリーライターの男から、
出来上がった雑誌が送られてきた。

俺はそれを一通り読んで、ため息をつく。

……まあ、こういう書かれ方をするとは思っていたが……。
煙草の火をともして、紫煙をくゆらしながら
まだ一人でいるという結衣のことを、
ほっとするような、心配なような、
そんな複雑な思いで記事を読み終える。

……ただ、佳代の先日の強姦未遂事件のことまで記事は触れていて、
こんな書かれ方をするのが、予想外で、
正直、佳代にも申し訳なさ過ぎて、
結局、そんなつもりではなかったのに、
アイツまで巻き込んでしまった……そんな風に思っていた。

ふと、今回の記事で、結衣に悪い影響がないか、
心配になって、携帯を手に取る。

携帯に残っている、結衣の友達の電話番号に、
気づけば電話をしていた。


「……ああ。沙織か」
電話の向こうからは、びっくりしたような声が聞こえる。

「拓海、久しぶり、どうしたの?」
そう尋ねてくる言葉に、適当に答えて、
「記事、出ただろう?」
そう俺が言うと、うん読んだよ、と応えがある。

結衣の親友の、相変わらずしっかりした話しぶりに、
思わず苦笑いをしながら、

「アイツどうしてる?」
そう尋ねると、

「うん、相変わらず……。
表面上は元気だけどね……拓海も……?」
彼女とやり直せないの? ときっと尋ねたいのだろう。
ただ、それは結衣の中での罪悪感というか、
そう言うものがクリアできなければきっと難しいだろうということも、
親友の彼女はわかっていて、

「……ごめん、きっと一番そう言う風に思うのは、
拓海だって一緒だよね……」
そう言って言葉を詰まらせる。

「……拓海、他に好きな人できた?」
ふと切り返すように尋ねる沙織の言葉に、
一瞬佳代の姿が思い浮かぶが、

「……いや、俺はそう言うのはちょっと……」
そう答えると、電話の向こうから、小さなため息が聞こえる。