ずぶり。



嫌な音が、耳に響いた。


しまった、と思ったときには、もう剣が振り下ろされていた。


…なのに、痛みが一向に襲ってこない。


あたしは恐る恐る、瞑っていた瞼を開いた。


「――――っ…」


信じられない光景が、目に飛び込んできた。



あたしの目の前に、うずくまるように倒れているウィリー王。


長剣は、その手から少し離れた所に転がっている。


そしてその後ろに立つ、ライト。


その手には、真っ赤に染まった短剣が握られていた。


「………大丈夫ですか?」


声を掛けられ、体がビクンと反応する。


「……な、に…して…」


「…父上は平気ですよ。急所は外しました」


…そんなことを聞いてるんじゃないのに。


「…どうして…?」


「どうして?」


あたしの言葉を、ライトはオウム返しのように繰り返した。


そのぶっきらぼうな口調に、あたしは体を強ばらせる。


ライトが短剣の血を布で拭い、鞘に収めてから、口を開いた。