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姫様たちが謁見の間に入り、扉が閉められると、俺はその扉へもたれかかるようにして座り込んだ。


こういう時に側にいないと、不安になる。


あの日、俺が姫様の護衛に就くとなった時、アラゴ様はこう仰った。



―――『ルチルを頼むよ、ライト』



その言葉に従うことが、俺の生きる目的となり、義務となった。


当たり前のように、いつも側にいたんだ。



姫様は今、崖の淵に一人で立っている。


少し大地が揺らげば、すぐに落ちてしまうだろう。


誰かが、手を差し伸ばさなければいけない。


それは俺の役目だと、ずっと信じてきた。



「…あんたさぁ」



不意にウィンに声をかけられ、俺は現実に連れ戻された。


見ると、ウィンは近くの窓辺に手をかけ、外を眺めている。


「何ですか?ウィン」


「…甘やかしすぎじゃねぇの」


外を眺めたまま放たれたウィンの言葉は、すうっと俺の体を射抜いた。


「…それは、姫様のことですか?」


急に、口の中が渇き始めた。


ウィンの言葉を肯定しているようで、嫌になる。