始業式で目が合ったゆかりは、微笑み返してはくれなかった。

直ちゃんがゆかりからの手紙を俺に渡した。


騒がしい廊下が一瞬にして、静まり返ったような気がした。

俺は、暑さも感じずに、冷え切っていた。



震える手で手紙を開く。


『龍へ ちょっと考えたい。 しばらく会わないでいよう。ゆかりより』



読みながら、周りの声が何も聞こえなくなっていた。


教室の黒板の消し忘れた文字をじっと見ているうちに涙が出そうになった。


机に顔を押し付けると、消しゴムの匂いがした。




毎日一緒に帰っていた2人が急に、別々に帰りだすと、すぐに噂は広まった。


「別れたの?」

「龍、フラれたんだろ」


中学生の中には、まだ恋を知らない奴らがいる。

心無い言葉で、人がどれだけ傷付くか知らない。


恋をした人じゃないと、この気持ちはわかんねぇだろう。