朝からどんより曇り空。
東京もとうとう梅雨に入り、気分を憂鬱にさせるじめじめとした空気が漂っていた。

でも、この憂鬱が天気のせいだけではないことくらい分かってる。


はあ……。


朝から溜息ばかりが吐き出される。


「朝からそんな重苦しい顔しないでよ。ただでさえ湿気で髪型決まらなくて最悪だっていうのに」


さすがに真里菜に怒られてしまった。

遠足の集合場所である現地の駅まで、薫や真里菜と一緒に向かっている。

憂鬱なイベント、遠足の日だ。


「どうせ、河野たちとは別行動するんだからいいでしょ? 何がそんなに嫌なのよ」


薫からのごもっともな質問に口を噤む。
その通りなのに、どうしてこんなに気が重いんだろう。


あれから結局、眼鏡男とは言葉を交わしていない。

一度だけ、アイツが紙を渡して来たことを除いて。

でも、私は何も言ってないから、言葉を交わしたとは言わないだろう。


『これ、俺らのルート。これで先生には許可取ってあるんだから、アンタたちがどこに行くにしても話は合わせとけよ』


そう言って一枚の紙を私の席に置いていった。