ケータイ小説 野いちご

この作品のキーワード

不透明ヒーロー

嘘つき恋心






「高緑くんってかっこいいよね。それにすごく優しいし」

無邪気に笑いながら話す千尋の隣で、私は上手に相槌を打てていただろうか。


雨上がりのアスファルトの匂いや湿気た空気に、灰色の雲を切り裂くように現れた青空と眩しいくらいの太陽の光。


そんなことはよく覚えているのに、千尋の話になんて返事をしたのかが思い出せない。



明日も明後日も明々後日だって千尋と顔を合わせる。

その度に私は、〝千尋〟の口から高緑くんの話を聞くことになるのだろうか。



それを考えると心がズシリと重たくなって、家に帰っても何もする気が起きずに制服を着たまま身体をベッドに沈めた。


最近の千尋を見ていればなんとなく察しはついていた。

千尋と高緑くんは席が隣同士だからか急速に仲良くなっていて、それがもしかしたら〝特別〟な感情を抱いているのかもしれないって。



他の人からしてみたら、こんなことを考えるのはおかしいのかもしれない。

ありえないって思われるだろう。


だけど、私は千尋の言葉を覚えている。



『もうーーーー好きになれないかも』

あの日痛々しげにポツリと呟いた言葉は降りしきる雨の中、私の心に鉛のように落ちてきて、鈍い痛みを感じるのと同時に千尋の笑顔を消したくないと強く思った。








< 1/ 164 >