「あーもー。あついー。」


ガラガラと、キャリーケースを引きながら、会社の最寄りの駅から会社までを歩く。


もう9月だというのに、残暑は厳しく昼間は焼けるように暑い。


椿と再会した次の日。
私は予定通り、山梨のワイナリーに出張していた。


私はワインの小売業社で働いている。
たくさんの取り扱いがあるワインの中でも、私が担当しているのは国内のワインだ。


駅から15分程歩いたところにある、レンガ造りのレトロな感じのビルが私の仕事場だ。


狭めのエレベーターに乗り、3階にある『営業3課』私の所属する部署へと向かう。


エレベーターから降りるとすぐにある給湯室から桜田が、3つお茶を用意して出てきた。


「あっ!センパイっ!お帰りなさいっ!」


桜田はなんだか、慌てていてガチャガチャとグラスが揺れた。


「桜田、こぼれる。」


「だって!それどころじゃないんですよっ!!あのっ…………」



桜田がそこまで言うと、奥にある応接室のドアが開き3課の課長が出てきた。


「あっ!進藤クンッ!お帰りっ!帰ってきてすぐ悪いんだけど、君が今やってる山梨のワインの資料をまとめて応接室へ持ってきてくれる!?」


「えっ!?あっ!はいっ!」


課長もなんだか焦っていて、なんとも言えない緊張感が伝わり、自分のデスクへと急ぐ。


「あっ、センパイっ!」



なおも、桜田は何かを伝えようとしているけれど、課長にお茶を急かされ応接室へと入って行った。


私はキャリーケースをデスクの横に置くと慌てて資料を集める。



両手に資料を抱え応接室へと急ぐ。