土曜日、午前6時。

平和な私の眠りを邪魔したのは、けたたましいスマホの着信音。

最近始めた就活の癖で、がばっと上半身を起こし、相手も見ないまますぐに通話に切り替える。


「はい、おはようございます。篠原です。」


『おはよーございますー。

おこしちゃったー?僕です〜』


電話越しの聞きなれない男ののんびりとした声に、スマホをいったん耳から離し、ディスプレイに表示された名前を確認した。

その名前に安堵し、力が抜けた。


「…っくりしたー、そーやかぁ。

おはよ。
どうしたのー?」


気持ちが緩むとともに、倒れるようにぱふっと枕にダイブした。


『いやー、鍵落としちゃって。

合鍵預けてる友達電話しても起きないから、起きるまでゆまねぇのところいさせてもらえないかなぁって』


「ああ、そうなのね。いいよー。

でもうち分からないよね?
最寄りまで迎えに行こうか?」


これが夜なら問題かもしれないが、朝だしいいだろう。

そう思って彼−そーやに答えると、ほっとしたような声が返ってきた。

その声に子犬のように可愛い、彼の笑顔を思い出す。