ケータイ小説 野いちご

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地味子ちゃんとオトモダチになりました。

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私の住んでいるマンションははっきり言って整いすぎている。
防音の施された室内に広すぎる空間。無駄に豪華なインテリア達。それらは全て、私1人が住むためだけに用意されたものだ。

「はぁー、眠れないんだけど……」

とぷとぷとマイカップの中にコーヒーを注ぎながら、一向に眠くならない体にため息を吐く。
ミルクも砂糖も入れずにグイッと飲めば、ブラックの苦い味が舌に広がった。
……眠くないのにコーヒー飲むから寝れないのかもしれないけど……。
まあ細かい事は気にしない。
だだっ広い部屋を、マイカップ片手に移動しながら蛍光灯の灯りを付けてテレビをつけた。流れるのは、面白くもないバラエティー。
適当にチャンネルを変えていると、ふとある特集に目が止まった。

『えぇー、××県××市で今、暴走族による被害が多発しています。近隣住民に対する暴行や田畑の荒らしなど……────』
「へぇー、なぁにが『被害』だよ……。つーか、暴走族はこの町の『住民』に数えられてないのかね」

相変わらず大人は何もわかっちゃいない。
子供がグレるのは大人の汚い部分に嫌気が差すから。自分をもっと見て欲しいから……。どんなに大人に反抗したって子供は大人がいなきゃ生きていけないのに。少し自分の言ったことを聞かないだけで『お前は間違っている』と真っ向から否定する。メディアだってそうだ……どうして暴走族と呼ばれる連中が存在するのかその意味を全く理解しちゃいないじゃないか。
確かに人間には色んな性格のやつがいる。全員が全員、何か理由があって暴走族やってる訳でもないかもしれない。ただ単にカッコイイという憧れからかもしれない、もしくは何か、『表の世界』で傷ついて、夜の世界に逃げてきたのかもしれない。
大人は、結局は表面しか見てくれないんだよ。

ピーンポーン

ぬるくなったコーヒーを飲み込んだ時、インターホンの音が、静まり返った部屋に響いた。ソファーから立ち上がり確認すればモニターには見慣れた顔が映っている。

「……はい」
『出てこい』
「…………五分待って」

接続を切ればマイカップに洗剤をつけて水に浸す。部屋に戻り適当に服を選んで、携帯などの必要最低限のものをバッグに詰め込んだら玄関に行き下駄箱からサンダルを取り出す。
戸締りは、ここは最上階というのもあってか窓は開かない仕様になっているため泥棒の心配はない。後は適当にカバンの中身を再確認した後玄関の扉の鍵を閉めてエレベーターに乗った。
ブーン、という音に若干の不快感を感じて顔を顰めれば携帯を取り出す。電源を入れて表示された時刻は午前一時。こんな時間に訪ねてきて要件も言わずに『出てこい』とは横暴だとも思うけど、こんなのは日常茶飯事なため今更言っても何も変わらない。
チン♪という音と共にエレベーターが開き、先の方を見れば眩しい光が目を覆った。

「っ……ったく、近所迷惑だっつの……」

チッと舌打ちをしながら出れば、ライトをチカチカさせながらドン、と効果音がつきそうな程に偉そうに腕を組みながらバイクに座っている男が1人と、その隣に苦笑いしながらこちらを見ている男が1人。
……ああ、なるほどね。
この状況を勝手に察した私は頭を掻きながら盛大にため息を吐き、奏(かなで)に向かって荷物を放り投げた。

「うわっ……!」
「荷物持って」
「あ、うん!わかった」

本当にこんなヘコヘコした奴が暴走族なのか疑うけども、この男は正真正銘の暴走族の副総長だ。普段は暴走族とは想像出来ないほどのリアル王子様なのだが……王子というよりヘタレな気もするけど……。まあ、とりあえずこいつは、もう1人の俺様感丸出しな玲央(れお)と一緒に、暴走族の総長と副総長をやっている……らしい。
らしいっていうのも、私は何回か2人とバイクに乗せてもらったことはあるけどアジトに連れてってもらったことも、集会に連れてってもらったこともない。玲央曰く『女だから狙われる』らしい。
まあでも、夜な夜なこうして連れ出されて夜の町をバイクで走るのは何回もあったから、こうして何の連絡もなしに来られるのは慣れたものだ。
奏の後ろに私が乗ったのを確認すれば、玲央はチラッとこっちを見た後走り出し、その後に続いて奏も走り出した。


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