この状況を一言でいえば最悪、だ。


「高野さん、ここ教えて欲しいんだけど」

「高野さん、ここわかる?」

「高野さん、やっぱりすごい!」


ちょっと黙ってくれ、と思ってしまう。


なんて不運なんだろう。


図書室でひとり、勉強をしようとしていたらクラスメイトに捕まってしまった。


「加藤くんさ、絶対高野さんのこと狙ってるよね~」

「それな!わかる」


一緒に勉強したいっていうから仕方なく許したのに。

真面目に勉強したのは最初だけ。後から始まるのはおしゃべり大会。


ここ、図書室なんだけど?

周りの人がその声に迷惑してるのがわからない?


居心地は最悪だ。

もう帰ろうか。


「ごめん。私もう帰らなきゃ」

「そっか。ごめんね、私たち付いてきちゃって」

そう思うなら来るなよ。

そう思いつつ、笑顔を作った。


「ううん。また明日ね」



明日なんて話すかどうかわからないのに。