校門をくぐったときから、いやもっと前から感じていた視線は、校舎内に入るとより一層強くなった。


みんな私をチラチラと盗み見てはコソコソと噂話をする。


そして教室に入った瞬間、クラスの人たちが息を呑んだのが分かった。


何故かって、それは私の頬に大きな湿布が貼られているからだ。


運良く翌日が創立記念日だったため、2日ぶりの登校となった今日。

男に殴られた痣は少し薄くなったものの、湿布を外してしまうとグロテスクな色をお披露目することになってしまうのでまだ隠している。


「た、高野さんどうしたの?」


ある女の子が驚いた間抜け面のまま尋ねてきた。

その周りの子たちも固唾を呑んでこちらを見ている。


「ちょっと階段踏み外しちゃって」


なんて見苦しい言い訳だ。

階段から落ちてこんな頬ピンポイントだけを怪我するなんて相当器用じゃないと出来ない技である。