「お父様も大変心配されてらっしゃいますよ?」


嘘つき。

武田さんは、いつだって嘘ばかりだ。


「不自由な思いをされてるのではないですか?そろそろ戻ってこられたらどうです?」

「自分の不甲斐なさは日々感じています。心配していただきありがとうございます。でも、私は今とても自由よ。お見合いをする気はありませんので。」


ピッ。


やまゆり保育園で働き出してちょうど1ヶ月が過ぎた。


お父さんの秘書である武田さんから電話がかかってきたのは、みんなの顔も覚えようやく保護者の顔も一致してきたそんな土曜日の仕事帰り。



今まで育ててもらったその恩はきちんと感じているつもりだ。

でも、自由に生きたい。自分の足で生きていきたい。


佐渡さんのように、園の先生たちのように自分で稼ぎ、強く生きていきたいのだ。



そう思った矢先、


「あれ?水が出ない…。」


お風呂貯めようと蛇口をひねるが、捻れども捻れども水は出てこない。



緊急事態発生だ。