ケータイ小説 野いちご

理想の恋は、誰に微笑む

すべては玉の輿のために




ブランドスーツに身を包み、足元は磨き上げられた革靴。


誰もが知る高級車を所有して、超高層ビルに社を構える。



「ありがとう。今日もとっても素敵だった」

「待って、始芽ちゃん。……今日も、ここまでかい?」


たとえ語尾が、実年齢よりオジサンに思えても、あたしは不敵な笑みで返す。


「お父様が厳しいのよ。結婚相手じゃないと、挨拶も要らないって」


デートの後の、キスはお決まり。

そっと頬に口づけして、にこっと微笑んだ。


「また連絡するね」

「あ、ああ。僕もまた連絡するね」


名残惜しそうにこちらに手を振って、運転席の男はアクセルを踏み込んだ。


ブランドスーツ、磨き上げられた革靴。

高級車に、大手会社勤務。


それが、男に求める絶対条件。


「……ふぅ」


緩やかに巻いた髪を後ろになびかせて、目の前にある豪邸に背を向けた。





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