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「おお!字、上手ですね!雅春さん」



屋台を出した日の翌日、雅春さんが開店前に姿を現した。


そんな彼を、私はとびきりの笑顔で迎え、大きめの木の板と墨、筆を渡した。


そう、例の屋台に取り付ける看板だ。


与次郎さんが知り合いの中で、一番字の上手い人を考えた結果、雅春さんの名前が上がったのだ。



彼は、訝しげな表情を見せつつも、黙って筆を受け取り看板の文字を書いてくれた。

そしてものすごく達筆だった。



「お前に褒められると悪い気はしないな」


「あはは…」


「それにしても何故突然こんな物を考えたんだ?」


「宣伝にいいかなって。ここに置いてもらっているからには、何か私にできることを少しでもないかな、なんて」



まあ、字は下手すぎて結局こうして雅春さんに書いてもらってる訳なのだが。



「なるほど。まあ何というか…真面目だな」



雅春さんは、少し興味を持ったようにそう言って、私の方を見た。