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「お美弥、今日は屋台を出すぞ」



太一くんが、着替え終えて店に出てきた私にそう言ったのは、私がこの時代に来てから二週間少し経ったある日のことだった。

お客さんの数は相変わらずといった毎日である。



「屋台?」


「ああ。外で売るとこの店にずっといるより売れるから、時々出すんだ」


「へえ」


「まあ、準備に手間がかかるのと、麺の食感が多少失われるのが玉に瑕なんだけどな」



太一くんはそう言いながら外に出て、手招きする。

私は太一くんに連れられ、店の裏までついて行くと、そこには車輪のついた移動式の屋台があった。



「俺はまだ修行中の身だから、店で出すのはまだ作らせてもらえねぇんだけど、屋台で出すのは許してもらってるんだ」



そう話す彼は、何だかいつもより楽しそうに見える。

お父さんの与次郎さんのもと、いつも一生懸命の彼のことだ。
自分が作ったものを売ることができるのは嬉しいのだろう。