ケータイ小説 野いちご

江戸のうどん屋で働き始めました

話題らしいです…

***


私は、温かいお茶を淹れ、男の前に置いた。


久松さんを含め、店の全員が集まって座っている。

開店中にも関わらず、お客さんが一人もいないという、最近の徳々麺ではかなり珍しい状況だ。


私も、お茶を運んだお盆を近くに置き、男の向かいに座る。



「えっと…それで、私に用っていうのは…?」



私は恐る恐る尋ねる。

用件が全く想像つかなくて怖い。


男はそんな私の気持ちを読み取ったのか、穏やかな声で言った。



「突然申し訳ないね。
先程も言ったが、おれは人気蕎麦店、波蕎麦の店主、重五郎(じゅうごろう)だ」



…穏やかながらも謙遜はゼロ

自ら『人気』と宣言していくスタイルらしい。



「あ、私はここの店に働かせていただいてる…」


「お美弥、だろう?」




< 106/ 448 >